計測自動制御学会制御部門
Cyber-Physical & Human Systems調査研究会
SICE Control Division TC on Cyber-Physical & Human Systems
主査:畑中 健志(大阪大学)
副主査・幹事:井上 正樹(慶應義塾大学)
委員:飯野 穣(早稲田大), 石井 秀明(東京工業大学), 依田 高典(京都大), 内田 健康(早稲田大), 岡野 訓尚(岡山大), 加納 学(京大),河合 宏之 (金沢工業大学), 河合 康典 (石川工専),  岸田 昌子(国立情報学研究所), 中村 文一(東京理科大学), 中村 幸紀(岡山大), 永原 正章(北九州市立大学), 滑川 徹(慶応義塾大学), 早川 朋久(東京工業大学), 林 直樹(大阪大), 平田 研二(富山大),向井 正和(工学院大学), 村尾 俊幸(金沢工業大学),  山内 淳矢(東京工業大学), 和佐 泰明(早稲田大学)
 
   
調査研究会のイベント
   
   

調査研究会の目的

  サイバー世界と物理世界を有機的に相互接続するサイバーフィジカルシステムは,計測,制御,計算機科学,ネットワーク論,機械学習,人工知能等の学際研究課題として,これまで活発に研究が行われてきた.新たな理論基盤の構築に加えて,交通・自動車・航空・エネルギー・ロボティクス・ヘルスケア・製造分野等,先進的なアプリケーションへの取り組みも盛んである.これらのアプリケーションでは,人間あるいは社会が決定的に重要な構成要素としてシステムに組み込まれ,工学・情報システムと人間は様々な形で相互に作用する.
 対象やシナリオに応じて,人間を工学システムと共生する主体とみなす場合(下記の項目1.など)もあれば,人間が工学システムのスーパーバイザやオペレータの役割を担う場合(項目2.および3.の自動運転など),人間自体が制御すべき対象となる場合(項目3.の交通システムや4.など),人間が工学システムに目的を与える場合(項目4.や5.など)など,想定される人間の役割も多岐にわたる.本調査研究会では,特に以下に示す5つの課題について調査を行う.

   

1. ヘルスケア・リハビリテーション分野における人と機械の共生

ヘルスケア・リハビリテーション分野では,人と機械の共生を実現するシステム構築が求められている.人間の機能を拡張するオーグメンテッドヒューマンの実現のためには,人間の運動をサポートするハードウェア開発のみならず,人間が発生する力と人工的に発生する力をうまく融合して目的を達成するシステム制御技術が鍵となる.本調査研究会では,人の力や上位の意図を推定・学習する技術や個人差という不確かさを克服する制御技術など,人と機械の共生に寄与するシステム制御技術・理論について調査する. 

   

2.ロボティクス分野における人とロボット()の協調

力覚の再現や分身ロボットの実現など,近年のネットワーク技術の発展により,人間によるロボットの遠隔操作がさらなる注目を集めている.また,学習・人工知能分野の革新を契機として,人とロボットの両者が互いの特徴や状態を学習しながら自身の行動を変容させることで理想的な協調を実現するシステムの構築が求められている.本調査研究会では,人とロボットの協調シナリオ,人間の意志やtrustの時間発展モデルおよび制御アーキテクチャについて調査する.

   

3.自動車・航空・交通分野における人とサイバーフィジカルシステムの協調

自動車や航空機は典型的なHuman-in-the-loopシステムとして古くから研究が行われている.他方,近年の自動運転技術の進展により,従来よりも上位の制御階層を自動化することが可能となっている.これを加味した上で,理想的な人と自動制御の機能分担を議論する.また,よりマクロな交通システムに目を向けると,信号機や道路課金システムを対象として様々なサイバーフィジカルシステムの開発が進められてきたが,これらのシステムの導入が人間のモビリティにもたらす影響まで考慮した研究は行われておらず,これを実現する理論・技術シーズについて調査する.

   

4.エネルギー分野における人とエネルギー管理システムの相互作用

行動経済学の成熟に伴い,現状維持バイアスや損失回避バイアスなど,必ずしも従来の経済学が想定しない人間の特性が明らかになってきており,エネルギー管理,特にデマンドレスポンスにこれらの知見を活用しようとする取り組みがなされている.しかしながら,エネルギー管理システムの導入がもたらす人間の特性の変容については考慮されておらず,本調査研究会ではエネルギー管理システムと人の相互作用について調査する.

   

5.ビル・家庭における人の快適性のモデリング

人の快適性モデルとしてはPMVに代表される指標が様々に提案されてきた.しかしながら,これら指標は地域性を加味しておらず,必ずしも正確に快適性を表現しないことが指摘されている.また,学習・人工知能分野の進展により,地域や利用者の特性に合ったきめ細かいモデル構築が可能となっている.本調査研究会では,このような新たな快適性モデルの構築およびそれを組み込んだHEMS, BEMSの開発について調査する.